2013年7月18日木曜日

改:年次有給休暇の取扱い(判例・通達)

平成25年6月6日の最高裁判決を受け、年次有給休暇付与の要件を改めた通達(年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の取扱いについて)が厚生労働省労働基準局長より発せられました。

年次有給休暇の付与要件とは…

まずは基本的な要件を確認していきますね。
簡単に述べると、年次有給休暇は本来出勤しなければならない日の「8割以上出勤」しているときに付与されます。

例)
新入社員の場合、入社後6箇月間の出勤率が8割以上のときに10日付与。
その後は1年ごとに出勤率をみて、8割以上のときは勤続年数に応じた日数付与。


判例は…

無効な解雇により正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日について、年次有給休暇の付与要件(8割以上出勤)をみる際にどのように扱うかが争われました。
 ↓
出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるべき。
(裁判となった事案では)年次有給休暇権の成立要件を満たしているものということができる。


通達

前記判例を踏まえて発せられた通達のご案内です。
http://www.office-sato.jp/_src/sc4260/2013.07.10_rouki_tutatu_nenkyu.pdf

出勤率の算定にあたり「出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものとする」とされた通達の一部を引用します。
例えば、裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や、労働委員会による救済命令を受けて会社が解雇の取消しを行った場合の解雇日から復職日までの不就労日のように、労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日が考えられる。
通達では「全労働日」の取扱いに関し、上記以外のことも触れられていますので、年次有給休暇の管理を行う部門の方は念のため通達原文にてご確認ください。


判例の内容


関連条文

以下は、法令データ提供システム(総務省)の労基法条文リンクです。
労働基準法39条]が年次有給休暇の条文です。

参考情報

2013年7月4日木曜日

労働関係法令のチェックテキスト

秋田労働局で発行している「労働関係法令に係るコンプライアンス・チェックテキスト」の案内です。

掲載内容

大きく分けると次の3つの分類があり、計78のチェック項目が設定されています。
大きなトラブルに発展する前にぜひ活用してみてください。
  • 募集・採用
  • 就労時
  • 解雇・退職等の離職

「いくつも引っかかってしまった」というときは…

すべての事項を一斉に法令の基準に合わせるのは難しいこともあると思います。
  1. まずは【過重労働】【作業環境や作業方法】のように労働者の安全・健康に支障が出てくる可能性があるもの
  2. 次に【採用・退職】など契約内容を巡ってトラブルが発生しやすいもの
このように、法令の水準に達していない事項と問題が発生したときの影響の大きさを考慮し、優先順位をつけながら対応を検討していくとよいですよ。

※上記順番は一例です。基準をクリアしていないものの内容・程度に応じて対応の順番を決めていきましょう。


2013年7月3日水曜日

裁判所における個別労働紛争解決手続について(PDF)

裁判所WEBサイトにて公開された「裁判所における個別労働紛争解決手続について」(PDF)のご案内です。
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/2507_kouhou.pdf

以下、引用です。
Q 労働関係に関するトラブルはいろいろありますが紛争の当事者同士では、うまく解決することができないことも…
このようなとき、裁判所ではどのような手続があるのでしょうか?
A 裁判所では、裁判(民事訴訟)手続をはじめ、地方裁判所における労働審判手続、簡易裁判所における少額訴訟手続民事調停手続など、一般国民から選ばれた労働関係の専門家が関与して実情等を踏まえた解決を図る手続があります。

関連情報です(裁判所WEBサイトより)。

2013年7月2日火曜日

雇用保険 平成25年8月以降の基本手当日額等

平成25年8月以降基本手当日額等が変更になります。

今回の変更は、平成24年度の平均給与額(「毎月勤労統計調査」による毎月決まって支給する給与の平均額)が平成23年度と比べて約0.5%低下したことに伴うものです。
具体的な変更内容は以下の通りです。
リーフレットその他の参考資料は、下の方にアップしています。

基本手当日額の最低額の引下げ

1,856円 → 1,848円(▲8円)

基本手当日額の最高額の引下げ

基本手当日額の最高額は、年齢ごとに以下のようになります。
60歳以上65歳未満6,759円 → 6,723円(▲36円)
45歳以上60歳未満7,870円 → 7,830円(▲40円)
30歳以上45歳未満7,155円 → 7,115円(▲40円)
30歳未満     6,440円 → 6,405円(▲35円)

雇用継続給付の限度額

高年齢雇用継続343,396円 → 341,542円
育児休業給付 214,650円 → 213,450円
介護休業給付 171,720円 → 170,760円


[参考]
雇用保険により受給できる1日当たりの金額を「基本手当日額」といいます。
この基本手当日額は、次のように算定されます。
なお、非常に大ざっぱな表現で記載していますので、正確に賃金日額の算出方法を把握する場合は後半に参考資料としてアップしたものをご覧ください。
  1. 直前の6か月の賃金の合計を180で割った金額を算出(=「賃金日額」といいます。)
  2. 賃金日額の50~80%(60歳~64歳については45~80%)が基本手当日額とされます。
基本手当日額は、在職中の賃金が高かった方ほど減額の幅が大きく(50%)、賃金が低かった方は減額の幅が少なく抑えられています(80%)。


資料

官報


リーフレット

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken/pdf/h250801_leaf01.pdf
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken/pdf/h250801_leaf02.pdf

その他の参考情報

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000035j9j-att/2r98520000035jce.pdf

2013年7月1日月曜日

賞与を支払った月に退職した従業員の社会保険料

追記情報:2013年7月にアップして以来、読まれた方から「賞与支払届は提出する必要がありますか?」の問い合わせが数件寄せられていましたので、記事の後半に加筆しました(2014年1月28日追記)。

夏季賞与の支給を終えた会社、あるいはこれから支給する予定の会社も多いと思います。
賞与を支払った月に退職した社員がいたときは、退職の日付により保険料徴収の有無が異なるため注意を要します。


基本事項の確認:保険料徴収

社会保険(健保・介護・厚年)の保険料は、
徴収開始:資格取得月から徴収開始します(※1)。
徴収終了:資格喪失日(※2)のある月の前月まで徴収します
※1 社会保険料の控除は1月のズレがありますので要注意です。例えば、4月入社の場合、「4月分」の給与に対する社会保険料は、5月に支払う給与から控除します。
※2 社会保険では退職日の翌日のことを「資格喪失日」といいます。
※3 取得と喪失が同月にあるときは1か月分の保険料が徴収されます。


着目点

「資格喪失月の前月」までに支払われた賞与が社保料の徴収対象となるため、退職日が「月の途中」または「月末」のどちらであるかが着目点です。

図解の方が掴みやすいと思いますので、以下をご覧ください。

月の途中で退職したとき

賞与支払をした月の途中に退職日がある(=賞与支払月と資格喪失月が同じ)ときは、最終月に払われた賞与からは社会保険料が徴収されません
次の図では、青い線(5月)までに支払われた賞与が保険料徴収の対象となり、その後に払われた賞与は保険料徴収の対象とならないことを表示しています。
※本人負担、会社負担の両方とも発生せず。


月末に退職したとき

賞与支払月(以下の例では「6月」)の末日に退職したときは、賞与支払月の翌月(例「7月」)に資格喪失日があることとなります(「退職日の翌日」が「資格喪失日」とされているため)。
「資格喪失月の前月」までに支払われた賞与が社会保険料徴収の対象となりますので、以下の事例では6月に支払った賞与は保険料徴収の対象となります。


賞与を支払った後で退職の申出があったとき

賞与支払の時点で退職日が分かっているときは、退職予定日に応じて社会保険料を控除または控除なしの判断をしていきますが、賞与支払いをした後に「会社を辞めたい」と申出があったときの扱いについて触れていきますね。

【月末より前の日付(例6/25、6/29等)で退職のとき】
このときは退職月に払われた賞与にかかる社会保険料は発生しませんので、既に控除してしまった分を退職予定者に返還しなければなりません。

まれに、経理上の処理を担当される方から「年金事務所から請求があった金額と会社で計算している社会保険料額が一致しない」とのお話をいただくことがあります。
賞与支払月の退職者がいるときは差異の要因となっている可能性がありますので、退職者の有無や退職日を確認してみるとよいですよ。


【月末(例6/30、7/31等)で退職のとき】
この場合は、退職月に支払われた賞与も社保料徴収の対象となりますので、退職者に対する社会保険料の返還は発生しません


雇用保険料の扱い

雇用保険料の徴収に関しては、社会保険のように「喪失月の前月まで」に支払われたものを徴収対象とするルールはありません。
月の途中の退職、月末退職のいずれであっても、「賞与額×雇用保険率」により雇用保険料額を計算し、徴収します。
※今回の記事の中で触れている「社会保険料」は、健康保険料介護保険料厚生年金保険料を指しています。



2014年1月28日追記

賞与支払届について 

社会保険では、賞与を支払ったときに「賞与支払届」を提出することとされています。
資格喪失月に支払われた賞与は保険料徴収の対象にならないことについては前述の通りです。
それでは、「賞与支払届」はどのようにするか?について触れますね。
結論を先に述べると、保険料徴収の対象とならない者であっても、資格喪失日の前日までに支払われた賞与があるときは賞与支払届に氏名や賞与額を記載して提出をします。

保険料徴収の対象とならない者も賞与支払届を提出する理由は?
これは、賞与にかかる健康保険料の算出と関係があります。
年度(4月~翌年3月)の賞与累計額を算出し、累計額が540万円(注:平成28年4月以降は573万円)を超過する場合は、超過する賞与額に対し健康保険料は徴収なしとされます。

この「累計」は、退職し再就職をしたときも再就職先の保険者(健康保険を運営している「協会けんぽ」「○○健康保険組合」などを「保険者」と呼びます。)が同じであれば、合算をします。

このように、退職者についてもその後の再就職先で賞与が支給されたときに、年間の賞与累計額を算出することがあるため、保険料徴収がない場合であっても賞与支払届を提出するのです。

この取扱いは、退職だけではなく育休中等で保険料徴収を免除されている者についても同様で、育休中に賞与支払があったときは、保険料徴収がない場合であっても、賞与支払届には氏名や賞与額を記載して届出を行います。


参考